Vercel のドメインについての記事がドメインについて簡潔にまとまっていて、とても分かりやすかったです。それに補強として「DNSがよくわかる教科書」を読んだので、DNS の基礎についてまとめておきます。

Domains Overview は Vercel のドメインについてのドキュメントです。

なお、本記事は Vercel の使い方の記事ではありません。

ドメインとは

exsmple.com という形式がドメインです。

ドメインとは、インターネット上のウェブサイトへのアクセスアドレスを指す、ユーザーフレンドリーな方法です。

インターネットでは Internet Protocol (IP) アドレスを使って通信しています。

IPアドレスは人間にとっては覚えにくいので、人間にとって覚えやすいドメイン名でアクセスできるようにしたものです。

ドメインは、あなたの家がある住所に例えることができます。誰かがあなたの家に手紙を送るとき、それがどこにあるのかを正確に知る必要はなく、ただ住所があれば、関連する郵便局がその手紙をルーティングしてくれます。

ドメインの構造

.がルート(通常は省略)
TLD (Top Level Domain) は .com などの最後の部分
2LD (Second Level Domain) は example などの最後から2番目の部分
3LD (Third Level Domain) は www などの最後から3番目の部分

ドメインの種類

絶対ドメイン名(absolute domain name)

ドメイン名を省略しない。末尾に.をつける。
相対ドメイン名(relative domain name)

ベースとなるドメインが決まっている場合、ベースドメインを省略することができる。
例えば、example.com というドメインがある場合、www や blog などのことを示す。
完全修飾ドメイン名(fully qualified domain name)

例: www.example.com.
末尾に.をつけるかは任意で一般的にはつけない。

DNSとは

当初、IPアドレスとドメイン名のマッピングは、hostsファイルに記述されていました。
しかし、インターネットの規模が大きくなるにつれて、hostsファイルに記述するのは大変になってきました。
そこで階層化と委任による分散管理をします。

インターネット上でサイトがどこにあるかという詳細を管理するシステムは、DNS（Domain Name System）と呼ばれています。

DNSは、最も基本的なもので、人間が読めるドメイン名をコンピュータが使いやすいIPアドレスにマッピングします。

委任された範囲をゾーン(zone)と呼ぶ
ゾーンを管理するサーバーをネームサーバー(name server)と呼ぶ

ネームサーバー(name server)が保持する情報

そのゾーンに属するドメイン名とIPアドレスのマッピング
委任先のネームサーバーの情報

↑を基礎として押さえておきましょう。

DNS Resolution とは

Vercel より

ブラウザでサイトをリクエストすると、まず、ドメインアドレスをIPアドレスに変換する作業が行われます。
このプロセスはDNSによって処理され、DNS Resolution と呼ばれます。

とのことです。

DNS Resolution の流れ

ブラウザにドメインを入力する

例えばexample.comを入力します。
ブラウザは、まず local DNS cache をチェックする。

example.comのIPアドレスを知っていれば、そのIPアドレスからサイトを要求します。
ChatGPT-4 に聞くと、local DNS cacheは2種類あり、
- オペレーティングシステムのレベル：
  
  DNSリクエストの結果は一時的にOS内にキャッシュされます。これはWindows, macOS, LinuxなどのOSに共通する機能です。
  具体的には、OSの一部として動作するDNSクライアントサービスがこのキャッシュを管理します。
  このキャッシュはコンピュータがDNS情報を迅速に取得できるようにするためのもので、インターネット接続の速度を劇的に向上させることができます。
- ブラウザのレベル：
  
  いくつかのウェブブラウザ（ChromeやFirefoxなど）もまた、独自の内部DNSキャッシュを持っています。
  これはブラウザが頻繁にアクセスするウェブサイトのDNS情報を迅速に取得するためのもので、ウェブブラウジングの速度を向上させることができます。
のレベルに分かれています。
ブラウザは DNS query を開始します。

ブラウザ、正確には「末端」を意味する スタブリゾルバー(stub resolver)から
DNSクエリ(DNS query)が、再帰リゾルバ(recursive resolver)と呼ばれるサーバーに送信されます。

再帰リゾルバ(recursive resolver)はフルリゾルバー(full resolver)と言われることもあるらしいです。
recursive resolver が DNS サーバーに問い合わせを行う。

以下の手順で行われます。
- recursive resolver は ISPまたはサードパーティが提供する。
- recursive resolver は、ブラウザとDNSサーバーの中間的な役割を果たし、解決プロセスの速度と効率を向上させるために使用されます。
- recursive resolver は、まずキャッシュをチェックして、そのIPアドレスがすでにあるかどうかを確認します。もし持っていない場合は、DNSサーバーにIPアドレスを要求します。
- ネガティブキャッシュという「存在しない」という結果もキャッシュします。
さらに stub resolver と recursive resolver の間には forwarder というものが存在します。
forwarder は recursive resolver に対して、DNSサーバーへの問い合わせを行うように指示します。
forwarder はホームルーターなどによって提供されることが多いです。
DNSサーバーへ問い合わせる

DNSサーバーのネットワークは、階層構造になっており、世界中に配置されています。

ネームサーバーには、ルートネームサーバー、TLDネームサーバー、権威サーバーの3種類があります。
1. ルートネームサーバー (Root Name Server)
2. TLDネームサーバー (Top Level Domain Name Server)
3. 権威ネームサーバー (Authoritative Name Server)
recursive resolver は NDSサーバーのネットワークに次のようなパターンで問い合わせを行います。

毎回、ネームサーバーへの問合せ結果は recursive resolver に戻ってきて、結果をみて次の問い合わせに行きます。

ネームサーバーが他のネームサーバーに問い合わせることはありません。
ルートネームサーバーに問い合わせる。

ネットワークの入り口には、13のルートネームサーバーがあります。
ルートネームサーバーに最初にコンタクトを取り、ドメイン名を調べ、リゾルバーを正しいTLDサーバーに誘導します。
recursive resolver は、どのようにルートネームサーバーを見つけるのでしょうか？
ヒントファイルというルートサーバーのホスト名とIPアドレスのリストを持っています。recursive resolver はこのファイルを使ってルートネームサーバーを見つけます。
TLDネームサーバーに問い合わせる。

TLDネームサーバーは、同じTLDに属するドメイン名に関する情報を保存します。
たとえば、example.comを検索する場合、recursive resolver がルートネームサーバーから応答を受け取ると、com のTLDネームサーバーに問い合わせをします。
TLDネームサーバーは、example.comのIPアドレスマッピングをAレコードに保存している権威ネームサーバー(example.comネームサーバー)の詳細をリゾルバーに返信します。
権威ネームサーバーに問い合わせる。

権威ネームサーバーは、このAレコードを recursive resolver に返し、recursive resolver は結果をキャッシュして、ブラウザに返します。
ブラウザはIPアドレスを取得して、ウェブサーバーにリクエストを送信する。

ブラウザがIPアドレスを取得すると、そのIPアドレスにあるウェブサーバーにブラウザからHTTPリクエストが行われます。

権威サーバーの可用性

権威サーバーが１台だともしそれがダウンしたときに、そのゾーンの情報提供ができなくなります。

そのため冗長構成で複数台が設置されます。

どの権威サーバーに問い合わせても同じ結果が得られます。これをゾーン転送といいます。

コピー元の権威サーバーをプライマリサーバー、コピー先の権威サーバーをセカンダリサーバーといいます。

プライマリサーバーとセカンダリサーバーは異なるネットワークに置かれるべきです。

複数台の権威サーバーがある場合、どの権威サーバーに問い合わせるかは RTT(Round Trip Time)が短いサーバーに優先的に問い合わせます。

RTT とはレスポンスの帰ってくるのにかかる時間のことです。

TLドメイン、Apexドメイン、サブドメイン

TLドメイン

com、org、netなどのドメイン名の最後の部分です。

これらは、ICANN（インターネットコーポレーションアサインドネームズアンドナンバーズ）によって管理されています。

TLDは、

国別コードトップレベルドメイン（ccTLD）
ジェネリックトップレベルドメイン（gTLD）

に分類されます。

Apex domain

Apexドメインは example.com のようなルートレベルのドメインです。

サブドメイン

サブドメインとは、blog.example.comやhelp.example.comのようなドメインの最初の部分です。

DNS record

DNSレコードは、ドメインとIPアドレスを対応付けるデータベースの項目で、ネームサーバーに保存されます。

項目	意味
Domain	そのサーバーで問い合わせているドメイン
Data	IPアドレスまたはドメイン、文字列など
TTL (Time to live)	再帰サーバーが特定のレコードをキャッシュに保存しておく時間
Record Type	レコードの種類

そのゾーンに属する DNSレコードは ゾーンファイルにまとめられ、それを権威サーバーが読み込みます。

Record Type に関しては、以下のようなものがあります。

Record Type

項目	意味
A	ドメインのIPv4
AAAA	ドメインのIPv6
NS	ネームサーバーのホスト名
MX	そのドメインの配送先と優先度
SOA	ゾーン頂点に設定される (Start of authority)
CNAME	別のドメインのエイリアス
TXT	ドメインに関する任意の情報

Aレコード

IPv4アドレスをドメインに関連付けます。

AAAAレコード

IPv6アドレスをドメインに関連付けます。

MXレコード

メールの配送先のメールサーバーのホスト名を設定します。

またそのメールサーバーがそのゾーンにあるなら、メールサーバーのIPアドレスをA/AAAAレコードで設定します。

例えば、recipient@example.com にメールを送りたいとします。

メールが送られると、example.com のMXレコードを確認して、そのドメインのメールサーバーのホスト名を取得します。

メールサーバーのホスト名が mx.example.com だとします。

だとしたら MXレコードは以下のようになります。(TLLやClassは本来必要ですが省略)

example.com. MX  mx.example.com.

そして mx.example.com を探しにいきます。そのメールサーバーが同じゾーンにあるなら、A/AAAAレコードも設定します。

mx.example.com. A 192.x.x.2

MXレコードには優先度も設定でき、最も小さい数値から順にメールの配送にチャレンジします。

SOAレコード

ゾーン頂点に設定されるレコードです。

ゾーンの頂点とは例えば、example.com のゾーンでは、example.com です。

委任されたゾーンを管理するための情報を保存します。

以下の情報が含まれます。

絶対ドメイン名
NNAME(そのゾーンのプライマリサーバーのホスト名)
RNAME(管理者のメールアドレス)

メールアドレスの「@」は「.」に置き換えられます。
つまり、admin@example.comの管理者のメールアドレスは、admin.example.com. になります。
SERIAL(ゾーンファイルのバージョン番号)

セカンダリサーバーは、プライマリサーバーに定期的に問い合わせて、ゾーンファイルのバージョン番号を確認します。
バージョン番号が大きくなっていた場合は、ゾーン転送をリクエストしてゾーンファイルを更新します。

後の情報は、単語の意味のままなので説明は省略します。

NSレコード

委任に関する情報を NSレコード に保存します。
つまり親ゾーンが子ゾーンを管理するために必要な情報を保存します。

NSレコードは、ホスト名を保存します。例えば、ns1.example.com と ns2.example.com です。

子ゾーンのネームサーバーが複数ある場合、複数のNSレコードを設定します。

またホスト名だけでは子ゾーンを管理するネームサーバーがどこにあるかわからないので、IPアドレスであるAレコードやAAAAレコードを設定します。

またそのAレコードやAAAAレコードのはglueレコードと呼ばれます。

CNAME(Canonical Name)レコード

一言で言うと、別のドメインへ DNS Resolution をさせるためのレコードです。

外部(ではなくてもよい)サーバーへ自分のドメインでアクセスさせたい場合に使います。

例えば webアプリケーションにおいて、CDN を使うケースはよくあります。

CDN からコンテンツを配信するので、自分のドメインから最終的に CDN への名前解決をしなければなりません。

そこでアクセスさせたい CDN のドメインを CNAMEレコードで設定します。

そうすると自分のドメインで CDN へアクセスできるようになります。

www.example.jp. CNAME cdn.example.com.

上の例では example.jp と example.com の TLD が違うので別のゾーンにそれぞれの情報があることがわかります。

www.example.jp で名前を探すと別ゾーンの cdn.example.com へ名前解決をし始めます。

TXTレコード

ドメイン名に任意のテキストを文字情報として保存します。

2つ紹介します。

SPF(Sender Policy Framework)
DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting and Conformance)

DMARCは、なりすましメール対策のための送信ドメイン認証で使う情報です。

他にも、作ったサイトを Google Search Console
に登録するときに使う情報も TXTレコードとして提供されています。

Tag: dns